伊藤かおりさん

今回のインタビューは、
新潟県新発田市の商店街にて古本屋「古本いと本」を営んでいる
伊藤かおりさん(通称:いとぽんさん)です。

いとぽんさんインタビュー1

伊藤さんは、インタビュアーの土屋が主催している新潟×朝活に
立ち上げ初期に参加してからの付き合いです。

その頃は大学卒業間もない頃で、会社員として働いていましたが、
あれよあれよという間に会社を辞め、本屋修行を行い、
古本屋を立ち上げて運営しているという経歴の持ち主です。

さらに、古本屋を経営する傍ら、
不定期で以下のような本に関するイベントも開催しています。

本の合コン
合コンのように男女の数を合わせて開催される読書会。
「本と合コン組み合わせたら面白くないか?」という思いつきで始め、
今では定期開催に。

②お茶飲み読書会
好きな本を持ち寄って、お茶を飲みながら紹介する読書会。

③ブックトークライブ
本をテーマにして、ゲストとトークセッションするイベント。

本を媒介として人と人、または人と新しい世界を結びつけている
本の遊び人、伊藤さんにお話を伺いました。

新しい世界の人と会う楽しさを知った大学時代

高校を卒業したら都内の女子大学に進学して、栄養学を学びました。
部活もしていたので、勉強と部活にと忙しい日々を送っていました。

とはいえ、大学生らしいこともあって、
友達に誘われて合コンに行くことも。

高校までは男子とは緊張してあまり話せなかったけど、
大学には女子が多いし、このままじゃダメ、まず行動しようと思って。

最初はそんなに面白くなかったんですけど、
だんだん知らない人と話すのが楽しいなと感じるようになったんです。

そうやって少しずつ回数を重ねるうちに、
自分と違うタイプの人とも普通に話せるようになっていきました。

1、2年の頃はずっと学校中心の生活だったのですが、
こうやって初めて会った人と普通に話せるようになってきたことや、
3年生になってから必修授業が少なくなってきたことで、
少しずつ学校の外に行くようになりました。

ちょうどその時期、 大学近くの本屋で偶然ある本を手に取りました。
ブックコーディネーターの内沼晋太郎さんの
「本の未来をつくる仕事」という本です。

その本が当時の私にはとてもインパクトが強くて・・・

内容は内沼さんが本を切り口に企画した
様々なプロジェクトが紹介されていたんです。

内沼さんが28歳の時出した本、
その本を読んだ当時、私は23歳でした。

自分が5年後28歳になったとして、
内沼さんのような人にはなれないと思うけど、
少しでも近づいていきたいと感じました。

それから内沼さんのことが気になり始めて。

いったいどこに行ったら会えるんだろうと思って調べると、
内沼さんの事務所が世田谷ものづくり学校にあることを知りました。

廃校を利用した施設で、
以前別の媒体でもものづくり学校を見たことがあったので、
直感で行くことにしたんです。

そしたら楽しかった!

ただ、結局アポイントをとらずに行ったので、
内沼さんには会えませんでした。

だけど、世田谷ものづくり学校に足を運んだことで、
そこで活動している様々な人とつながることができたんです。
例えば屋上農園のプロジェクトに参加することになったり。

そこでは大学では決して出会えない多様な世代の方との交流がありました。
デザイナーやクリエイターや企業家など。

別に大学で孤立していたわけではないんですが、
元々同世代とは群れたくないと思っていて、
同じ年代の人がいない場所にいたかったんです。

「自分だけ知ってる、もう1つの場所」という感覚。

世田谷ものづくり学校はまさにぴったりの場所でした。

ここで屋上農園をやったり、
異世代の人と交流するという貴重な経験ができました。

家⇔会社から新潟×朝活へ

大学を卒業した後は、地元新潟の食品系の企業に就職しました。
それと同時に家と会社の往復になりました。

地元の友達とは大学で離れてから疎遠になってしまったので、
街中に行く時も1人で行くことが多く、自転車で街巡りをしていました。

ただ、休日も同じことをしていたので、だんだんと飽きてきたんです。

そこで思い出したのが朝活でした。

大学時代に読んだ雑誌で朝活特集をやっていたのを読んでいて、
このタイミングでその雑誌のことを思い出したんです。 そ

こで新潟にもあるかなと思ってネット探したところ新潟×朝活がヒット!!

参加前に主催者(土屋のことです)のプロフィールを細かくチェックし(笑)、
定期開催の実績や名前&顔写真を公開していて、
「怪しくなさそうだ」だと思ったので参加することにしました。

記念すべき初回は緊張してよく覚えてないんです。

でも朝活に行った後の爽快感だけはしっかり覚えています。
本当に楽しかった!いつもの週末じゃない感じで!

こんな楽しそうな大人がたくさんいることを初めて実感しました。

朝活への参加で一気に世界が広がりました。

この感覚は世田谷ものづくり学校へ初めて行った時に似てますね。

この朝活の経験から、いろいろな場所へ行って、
自分と違う環境の人に会ってみようという気持ちに変わりました。

参加者から主催者へ

いとぽんさんインタビュー2
しばた朝活の様子

朝活参加を機に、新潟市内で行われている読書会に参加したり、
2011年3月にできた本屋「ツルハシブックス」に足を運んだり、
いろいろな場へ行きました。

新潟×朝活にも何度も参加していたのですが、だんだん参加者が増えてきて、
連続参加するのが申し訳なくなってきたんです。

その時にひらめいたのは、
「自分で主催すれば全部参加できるし、自分のペースで開催できる」
ということでした。

朝活だったら何度も参加して様子もだいぶわかってるし、
 ・こんな感じでやればいいとイメージできること
 ・もし人が集まらなくても、早起きできるし、
  時間を有効に使えばいいと思ったこと
を考えると、「いける!」と思いました。

そしてとりあえず住んでいる新発田で「しばた朝活」を始めてみました。

同じ時期に、一箱古本市というイベントが新潟市内で開催されることを知り、
面白そうだと思って1人で出店したんです。

そしたら、近くに先ほど話に出たツルハシブックスの店主、
西田さんもお店を出していました。

以前お店に行った時には不在で、お話はできませんでした。

いつかお話してみたいと思っていたので、
90店もいる中で隣になったことに運命を感じました。

話してみると意気投合して、
私もツルハシブックスのような本屋で働きたいと思うようになったんです。

それからは芋づる式にいろんなことが動いていきました。

興味が新しく出てきて、動いているとまた興味が出て、
新しい人に会ってまた興味が出て・・・という好循環が今も続いてます。

学生時代は自分から何かを始めた経験がありませんでした。

面白そうなことを見つけて、それに参加する立場。

でもイベントに参加するうちにだんだんそれだけでは物足りなくなって、
自分でも何かやりたいと思うようになったんです。

その気持ちがベースにあったから、
しばた朝活や一箱古本市の一歩を踏み出せたんだと思います。

やりたいことを話してると実現する

いとぽんさんインタビュー3
一箱古本市の様子

2011年は激動の年で、この年の11月に1年半ほど勤めた会社を辞めました。

ただ、具体的には何も決まっていませんでした。

会社を辞めてからは、 まず憧れの本屋のツルハシブックスで修行しました。

修行といっても本屋の仕事教えてもらうというより、
仕事を見ていて気になることを自分で聞く感じで。

本屋をやりたいというより、 ツルハシブックスのように、
その店に訪れた人同士がつながる「場」を作りたい、
そう思っていたので、店内でお客さんとのやりとりを勉強しました。

その本屋修行中、新発田の私立大学の先生から、
 「新発田商店街で運営してるカフェで、今後スペースを広げるから、
  その一角に本のあるコーナー作りませんか?」
と声をかけてもらったんです!

実はこのカフェはしばた朝活のイベントで借りたことのある場所で、
そこを管理している先生に、
しばた朝活のメンバーが私のことを紹介してくれてたみたいなんです。

「本屋やりたいって言ってる女の子がいる」って。

そしたら大学の先生が興味を持って連絡をくれた、というわけです。

やりたいことを誰かに話していると実現するんだなと、
この時強く感じました。

3ヶ月で開店準備 〜始めるのは計画より勢い〜

いとぽんさんインタビュー4
古本いと本の外観

突然のお誘いで本屋を始めることになったんですが、
まずは本屋ってどうやって始めるのか?
という初歩的な問題から始まって。

古本屋の免許申請や本の選定、棚の整理、値段設定など、
やるべきことが山積みでバタバタでした。

まず何をやっていいのかわからなくて途方にくれたので、
講演会でお世話になった清水さんのところに行って話しを聞きました。

そしたら思いがけず、
「古本屋開いた人がいるから行ってみたら」
と紹介されました。

紹介を受けてそのお店に行き、そこで自分の古本屋への思いを語りました、
本だけじゃなくて人が集まる場を作りたいと。

そしたら思いに共感してくれたようで、
店主さんが本棚から古本屋入門みたいな本をとって私にくれたんです。

店主さんはその本を参考にしてお店を作ったみたいなんですけど、
その本、実は店主さんの私物で売る予定はなかった本なんですよね。

そんな大切な本をくれたことが驚きですし、すごく嬉しかったです。

自分は計画性がなくて、事業計画とか予算とか、
そういうのを考えて書いてみると、
「自分にはやっぱり無理だ」と思ってしまって。

計画を立てるとネガティブになって、 その計画がプレッシャーになって、
「やらなきゃ」という義務になってしまうんです。

そうなると全然面白くなくて・・・

だから始める時は計画をしっかり立てるより勢いでやってしまいました。

本当はもうちょっと計画性がほしいですけど(笑)

お店を開けるのが怖かった

2012年7月に本格的に「古本いと本」の活動をスタートしました。

本の販売をしながら、本のイベントや古本屋めぐりと、
とにかく動き回る日々。

念願の古本屋をオープンさせたんですけど、
最初はお店開けることが怖かったです。

お客さんからお金をもらうのも怖かった。
こんな私がもらっていいのか、と思ってしまって・・・

お金もらう時が一番嫌で、「本当にもらっていいの?」と思ってました。

手入れして自分がいいと思った本を売ってるわけですけど、
自信がなかったんです。
面白くないと言われたらどうしようって不安が常にありました。

その怖さを何とか乗り越えた頃、
今度はお店を開けるのがつらくなった時期がありました。

同じ作業の連続で会社みたいになってきたからなんです。
好きでやってるのになんでだろうって・・・

万人がお客さんになるわけだから、
なかなか本屋をしている時の悩みを人に言えなくて、
苦しい思いを溜め込んでました。

そんな心境のまま古本屋を毎日開けていたんですけど、
イベント主催することを一旦やめてしまいました。

何のために古本屋やってるんだろう、
という原点に立ち返って考えてみました。

そしたら、古本屋に来てくれた人やイベント参加者から言われたことや、
その時の写真にたくさんの笑顔があったことを思い出して、
やっぱりあの瞬間は楽しいなと思ったんです。

お店に来た人やイベントに参加してくれた人が、
最初は緊張した顔だったのに、
いつの間にか笑顔になっていく、そんな瞬間が好きだなと思って。

そう思った時に、「またやろう」という気持ちに戻ってきました。

今はいろんな人に本を買ってもらったり、
言葉をかけてもらったりを重ねて少しずつ自信が生まれてきて、
不安や自信の無さはなくなってきました。

置きたい本ではなく、置かない本を決める

いとぽんさんインタビュー5
古本いと本の本棚

古本いと本には、本は約400冊置いてあります。
これは古本屋としてはとても少ない方で、
通常少ないお店でも約1000冊あります。

自分のお店にはこれ以上はスペース的に無理だし、
そこまで多くの本を自分は選べないなと思ってます。
今くらいが自分にとってちょうどいいなと。

仮にスペースがたくさんあったとしたら、
そのスペースを埋めるためにジャンルを広げて、
興味のない本も置かないといけなくなります。

それは嫌で、自分が面白い、読みたいと思うものを置きたいんです。

せっかく自信がついてきたのに、
広げてしまうとよくわからなくなって、
また自信なくしそうな気がして・・・・

私は置かない本を決めています。

政治、宗教、スピリチュアル系や、ベストセラーは置いていません。

あと自己啓発系のビジネス書もなるべく置かず、
「読むとやる気がでるトランク」を用意して、
その中にだけ、ちょっとだけアツい本が並んでいます(笑)

最初は好きな本を並べようと思っていました。

だけど、自分の好きの範囲がぼんやりと広がっていて、
そのまま並べても棚全体がぼやけると思って、
やらないことを決めないとカオス状態になるって考えました。

そして、しっくりこない本を抜いていけば輪郭がはっきりするのでは、
とも思いました。

本屋をやり始めてからですね、こんな発想になったのは。

自分の好き嫌いは時間とともにどんどん変わります。

だから、時々本棚を見るとモヤモヤした気持ちになる時があります。

最初はよかったのに、 時間経って「この本なんか違うな」と思ったりする。

だから本棚のメンテナンスが大事で、
常に本棚は自分の興味の最新状態にしておきたいんです。

自分が読みたい本、お客さんに読んでほしい本を置いて、
しっくりこない本は抜いていく、
古本いと本の本棚はこうやって作られてます。

空間を使って何をしたいか考えるタイプ

本の合コンや読書会などの小さめのイベントは
今後も定期的に開催していきたいです。

今後は場所を固定せずにいろんな場所でやってみたいのと、
大人数でもやってみたいです。100人くらいとか?

ただその規模になると1人ではできません。

以前東京で本の合コンを開催したことがあったのですが、
その時は約25人の参加者がいたので、
2グループに分けて開催しました。

進行しながらグループをまとめるのは予想以上に負担で、
あと1人は協力者が必要だと思いましたね。

当日だけでも協力してくれる人がいるとすごく嬉しいです。

一緒に組んでやってみたい人は、
自分で何かを作ったり、自分と逆のタイプ(=計画性のある人)、
あとはお店を持ってる人と組んでみたいです。

お店を持ってる人と組みたいのは、
私がお店という空間を使って何をしたいか考えるのが好きだからです。

素敵なカフェに行った時には、
その場所を使って「こんなことをしたら面白そう」
とアイデアが次々と浮かんできます。

自分はお店で待ってるタイプではなく、
既にある素敵な場所を使って面白いことを企てたいタイプなんだと、
古本屋を始めてから気づきました。

商店街本屋化プロジェクトはじめます

本屋を開くのが目標だったんですけど、 
続けるうちに店にずっといるのは違うなと思うようになりました。

そんな気持ちを持っていたある日、 
同じ商店街の雑貨屋さんと話していたら、 
「雑貨屋に本があったら面白いよね」という話しになったんです。 

そこから話しがどんどん進んで、 
2014年4月から新発田商店街のお店とコラボして、 
古本いと本が選書し、お店に本を置くことになりました。 

 古本いと本の新しいかたち。

お店に置く本は、そのお店の商品と文脈づけて置きます。 

例えば食器があったら、
その横に「食にまつわるエッセイ」か「器にまつわる本」 
を置くように。 

そのモノを使った先のライフスタイルを伝える本を置いていきたいです。

モノだけ置いてても、お店の伝えたいメッセージは、
なかなか伝わりづらいと思うんですよね。 
本と一緒にすればもっと伝わるのではないかと。

モノも本も一緒に置くことでお互いが際立ってきます。 

そうやって本で演出していけたら面白いんじゃないかと。 

こんな風に店の中の各所に本が散りばめられてると、 
店に来るお客さんもきっと楽しめるはずです。 

本来本がない場所に本があるって、新鮮じゃないですか? 

何が起こるかわからなくて、偶然が起こる可能性が大きいと思うんです。

本屋には本好きな人しか来ないけど、 
他のお店には本が好きじゃない人も来てて、 
その人たちに本を手に取ってもらうことで、 
きっと面白い偶然が起こると思ってます。 

本とコラボするお店が商店街に増えていけば、 
「あのお店はどんなコラボがあるんだろう?」って気になりますよね? 

例えば、商店街に昔ながらの魚屋さんがあったとします。 

魚にも本にもあまり興味がない人でも、 
魚×本だと「なんだそれ!?」って好奇心がくすぐられる気がするんです。

そうするともっともっと街を歩きたくなる。 
そんなシーンを想像してると楽しくなってきますね。

ブックテーマパークを作りたい!

それからもう1つやりたいこととして、
数年前から言い続けてるんですけど、
ブックテーマパークを作りたいんです。

県内にある廃校を買い取って(笑)、
世田谷ものづくり学校みたいに部屋ごとにオーナーをつけて、
1つずつテイストの違う、コンセプトの違う本のある部屋を作る。

例えば紅茶好きの人の部屋だったら、世界の紅茶の本を置いたり。
ホラー好きだったら、内装をお化け屋敷みたいにしている本屋なんてどうでしょう。

某テーマパークみたいに入場料をもらって、
ブックテーマパークに入れば全部の部屋を見れるシステムを考えてます。

目標は某テーマパークを越えるリピート率!!

ブックテーマパークは働く場所と遊べる場所を同時に満たす場なんです。

いろんなタイプの人が共存しているので、
外に出て行かなくてもアイデアの元はそこにあります。

毎日のようにイベントがあって、
ワークショップもたくさん行われてて。

実際に街中に単独でお店出すのはお金がかかるから、
もっとハードルを下げてみんなが小商いができるように、
期間限定で誰でもお店が出せるようにしたりとか。

廃校は結構潰されてしまうんですよね・・・

また再利用したとしても、
一般の人が立ち入れないような場所にしてしまうのは
もったいないと思うんです。

人が集まる拠点みたいな、オープンな場にした方が絶対に面白い。

自分の母校が廃校になって入れなくなったら悲しいですよね。

まだ妄想なんですけど、
ワクワクするのは自由だ思って妄想を続けてます(笑)
いつか実現したい野望です。

本を使って何かをやり続けていく

いとぽんさんインタビュー6
古本いと本にて

今は本を読む人が減っていたり、本屋の売上が下がる一方だから、
本屋の生き残りは厳しくなっていると思います。

それでも、 捨てられるかもしれなかった本を古本屋が買って、
その本がまた誰かの手に渡り読まれることで生き返る、
そんな古本屋をこれからもやっていきたいと思ってます。

昔の私なら、できれば独立とか起業とか、
自分で何かを始めることを避けたかったですけど、
こうして自分で始めた古本屋が今は楽しいです。

そして日々スリリングです(笑)

そんな楽しさと怖さが入り交じった日々の中で
やれることをやっているので、 いつ死んでも後悔しないと思います。

4月からの商店街本屋化も、
もし食えなくなりそうなら他の仕事しながらでもやっていけますし、
まずはできることからどんどん外へ向かって動いていきます。

これからも本を使って何かをやり続けるのはずっと続くと確信してます。

本は面白い!!